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マケドニア問題3

supika1


各民族の民族主義を「ユーゴスラヴィア民族」を作り上げることによって解消させようとする一方、各民族主義を刺激しないよう(例えばボスニアで、セルビア人が何かの罪で逮捕されると無実のクロアチア人とイスラム教徒が一人づつ逮捕されるといわれたほど)細心の注意を払い、さらにティトー個人のカリスマでなんとか成り立ってきた社会主義ユーゴ連邦は経済の行き詰まり、南と北の経済格差などで社会主義体制がゆらぎ民族主義が復活しかかっているときにミロシェヴィッチという民族主義を煽りまくることで権力を握ろうとする勢力が現れ、各共和国の政府、議会内で分離独立を目指す民族派が台頭し、1991年以降ユーゴ北部中部は内戦に突入します。その過程で、1991年にマケドニアも独立します。

この社会主義ユーゴ連邦のもとでマケドニアのスラヴ人ははじめて「マケドニア人」という民族名を獲得しさらに共和国という政体を持つことにより、独立自体は極めて容易でした。ただその後は三つの理由で多難なものでした。

一つはマケドニア人の民族主義。民族主義自体には問題は無いのですが、問題はその中身でした。独立に先立って行われた議会選挙では復活したVMROが極右政党VMRO-DPMNEとして第一党になります。このDPMNEとは「マケドニア民族統一のための民主党」という意味で、ブルガリア、ギリシア領になっているマケドニアの併合を綱領の一つにしていたため、ギリシアに特に警戒され、下で書いたような強硬な対応で応じられます。ちなみにギリシアは旧ユーゴ連邦との間のスラヴ系民族のユーゴへの移住、それ以外のスラヴ人はーOVとかーOVDSKIで終わるスラヴ系の名前を禁じられギリシア風の名前に改名することを強制されます。これ以降一貫してマケドニア問題は解決したとの立場をとっているギリシアは、マケドニア民族主義の台頭に神経を尖らせています。

二つ目の問題はアルバニア人です。二つのバルカン戦争でセルビアとギリシアに切り取られたアルバニアは、セルビアの勢力伸張をおそれるオーストリア・ハンガリー帝国の差し金によって独立させられますが、その国境は民族分布とは一致しておらず、マケドニアのみならずモンテネグロ、ギリシアにもコソヴォと同じようにアルバニア人地域ができました。特にマケドニアはアルバニア本国との国境が長く、しかも国境地帯は2000メートル級の山が連なるためアルバニア人の越境が容易で、さらにアルバニア人は子沢山であるため、1994年にOSCEの立会いのもと行われた人口調査は22.9%だったのですが近い将来マケドニア人の人口を超えるであろうといわれます。(ちなみにここにはギリシア人、ブルガリア人、トルコ人、セルビア人、ヴラフ人、ロマ人など多様な少数民族が存在します) 独立以降、高揚するマケドニア民族主義(特にVMROの極端な排外主義)に対するリアクションとしてアルバニア人の民族主義も高まり政府との軋轢が生じてきます。2000年、コソヴォ戦争後の混乱の中コソヴォのアルバニア人ゲリラが越境し、コソヴォとの国境の近くにある首都スコピエにまで迫り、ちょうどVMRO政権とアルバニア人との間で緊張していた時期だっただけに非常に危機的状況になりました。

三つ目は、下で書いたとおりの周辺国の思惑です。さすがに第二次バルカン戦争から第二次大戦まで続いた地政学的状況が復活したということはできません。ギリシアはNATO加盟国、ブルガリアも2004年に加盟、セルビアは問題があるものの西側志向政策をミロシェヴィッチ失脚以降取り続けているため、当時のように露骨に動くことはない状況です。概観するとセルビアはもうここに野望を抱くことは無く、ギリシアの態度は上記のとおりで領土的野心は無く、ブルガリアはギリシアにいじめられているマケドニアをサポートする友人のようなスタンスととっています。ただ下で書いたとおりマケドニア人をブルガリア人だとする態度は一貫して変えていません。ブルガリアには実はVMROという政党(VMRO-CMD)があります。どこが違うかというとこれはブルガリア人による民族主義政党なわけです。ようするにブルガリア人としてのマケドニア人による民族主義政党というわけです。

マケドニアにはコソヴォ戦争以前からアルバニア人問題に対処するため予防的に国連平和維持軍(UNPREDEP)が展開していました。2000年にマケドニア政府が台湾と国交を結んだために中国が安保理でUNPREDEPの駐留延長について拒否権を行使したため、以降NATO、EU、OSCEなど欧州の安全保障機構がここの安全を維持しています。

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Author:crnaoluja
こんにちは。
東欧地域の戦略環境分析が専門のシンクタンクで研究員をしておりますチェコ出身のエリシュカ・マジャーコヴァーと申します。

ネクロマンサーのすぴか、その一味のミルチャ・アントネスクとともに東欧情勢について御説明していきたいと思います。

ハンガリー以北(V4)+バルト三国は私、南東欧がミルチャ、地政学・戦略論など理論面はすぴかが担当致します。

文責は @crnaoluja (twitter)

ミルチャのアイコン絵はあんねこ先生より頂きました。
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