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モンテネグロでの「陰謀」とロシアの関与、セルビアの動向

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Bună seara.
ミルチャです。

今回はモンテネグロ・セルビア・ロシアが絡む事件についてお伝えします。

この件について語るにはまだ十分な情報が出そろっておらず、憶測で語る部分が多くなってしまうのでこれを書くかどうか迷っていたのですが、とりあえず現在までに出ている情報と、それについての(控えめな)論評を書いてみます。

事が起きたのはモンテネグロ議会選挙の日、10月16日。元セルビア憲兵指揮官のブラティスラヴ・ディキッチ含むセルビア国籍数名が、モンテネグロのジュカノヴィッチ首相の支持者を襲撃し首相を拉致するという陰謀を企てたとしてモンテネグロ当局に身柄を拘束されました。

ディキッチは逮捕は不当だとしてハンストを行っている模様です。セルビア政府は事件とのセルビア政府の関係を否定しています。

その後、10月24日、ヴチッチ首相はセルビア国内でモンテネグロで違法行為を企てたとしてセルビア国籍の者数名を逮捕したと発表しました。これはモンテネグロで逮捕されたグループとは別のものであること、これについてもセルビア政府は無関係である、が、ある第三国と繋がりがあるという点に言及しました。
http://www.balkaninsight.com/en/article/serbian-pm-failed-to-explain-coup-in-montenegro-10-24-2016

そしてヴチッチ首相は、モンテネグロでの「陰謀」はセルビアで準備されたものであること、ジュカノヴィッチの行動は絶え間なく監視されていること、セルビアでは「東西の」情報員が活動していること、それに対して対処していく方針であることを表明しました。セルビアとモンテネグロの政治家の関与についてはやはり否定しています。
http://www.b92.net/eng/news/politics.php?yyyy=2016&mm=10&dd=25&nav_id=99497

この件はその後新たな展開を見せました。セルビアの有力紙Danas(ダナス)が、27日、セルビア政府に近い匿名ソースからの情報として、モンテネグロの「陰謀」に関与したロシア国籍の数名がセルビアから追放されたというものです。

この時期ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記がインテリジェンス面での協力強化についての協議のためにセルビアを訪問しており、この訪問はこの事件で悪化する可能性のあるセルビア・ロシア関係を修復するためだという憶測がなされました。
http://www.b92.net/eng/news/politics.php?yyyy=2016&mm=10&dd=28&nav_id=99536

ロシア政府はこのロシア国籍者のセルビア追放の件について否定。セルビアのステファノヴィッチ内相はパトルシェフの訪セルビアは以前より決定されていたとしてこの見解を否定しています。

合理的に考えればセルビアがこの「陰謀」を企てたというのは考えにくいです。こんな無謀ともいえる襲撃・拉致を行えば、政府の関与を否定したとしてもセルビアは国際的、わけても欧州内で非常に苦しい立場に追い込まれ、それはセルビアの西側・ロシアと等距離を置くという基本スタンスにもとるものとなります。

確かにモンテネグロはNATO加盟を目前に控え、実現すればセルビアは事実上NATOに包囲されることになります。セルビアはNATO加盟志向の立場ではなく国民には反NATO感情が根強いですが、今現在NATOとの関係が悪化しているわけではなくむしろNATOもセルビアとの良好な関係を重要としています。

考えられるのは、やはりロシアの思惑でしょうか。セルビアをバルカンにおけるロシアの「橋頭堡」としているロシアにとってセルビアのNATOによる包囲は好ましいものではない。モンテネグロのアドリア海の港湾(コトル、バール)も魅力的である。ロシアはベオグラードとモンテネグロのバールを結ぶ鉄道修復に投資するなどモンテネグロの動向を重視してきました。もちろんNATO加盟には強く反対の意向を表明してきました。

モンテネグロ国内のセルビア系は概ね政府に対し反抗的です。ジュカノヴィッチ退陣とNATO加盟への反対を主張するデモではセルビア国旗とロシア国旗が振られました。

今までセルビア人とモンテネグロ人は武力紛争を起こすまでに関係悪化したことはなく、ユーゴ連邦崩壊までセルビアとモンテネグロの関係も概ね良好でしたが、セルビア系の反政府の姿勢が政府との衝突を招き、それが民族関係を損なうということは考えられうることだと思います。

今バルカンでセルビア系が絡む武力紛争が起きれば、それはロシアにとって都合の悪い話ではないのです。先日のワルシャワサミットでの決定通りNATOはバルト方面と黒海方面での前方展開の強化を行っています。その裏側の西バルカンでの武力紛争はNATOにとって厄介なものとなります。武力紛争単体でも厄介ですが、ロシアがセルビア系保護を名目に紛争地に部隊を派遣でもすれば、ロシアとの全面対決を避けたいNATOとしては90年代のような手荒な手法で紛争解決を行うことはできなくなります。紛争が長期化すればバルカンの他の地域も連鎖的に不安定化する可能性も出てきます。

今回の件ではセルビア政府内での亀裂という危険性も考えられるかもしれません。10月30日、ヴチッチ首相の自宅近くに止めてあった車の車内からRPG、手榴弾、銃弾が発見されました。
http://www.b92.net/eng/news/crimes.php?yyyy=2016&mm=10&dd=31&nav_id=99547

この件を、国外の情報機関の活動を抑え込むのに積極的な(少なくともヴチッチの声明から見るに)ヴチッチ首相への恫喝だと考えることも可能かと思います。セルビア内務省は「こちら側」でしょうか。

ただし、冒頭で述べたようにまだ情報が少ないので、今のところ「推測」しかできない段階であることをご理解ください。

ともあれ、モンテネグロがNATO加盟を目前に控えた今、ロシア(とセルビアのモンテネグロNATO加盟を望まない勢力)の行動が激化することは考えられます。

9月11日、モンテネグロのコトルで「バルカンコサック軍」が設立されました。指導者のザプラチン氏はロシア人でソ連崩壊後様々な紛争で転戦してきた人物です。設立式には記事によればバルカン諸国の26のコサック集団の代表とロシアの政権寄りバイカー集団「夜狼」のメンバーが出席しました。
http://www.rferl.org/a/balkans-russias-friends-form-new-cossack-army/28061110.html

コトルでは警察が強制捜査で銃器、弾薬を押収する事件も起きています。
http://www.cdm.me/drustvo/hronika/kotoranin-u-kuci-i-stanu-krio-vatreno-oruzje-i-municiju

今後とも目が離せない状況です。


今回はこんなところでしょうか。

Noapte bună. La revedere. 

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管理人への執筆依頼などはこちらの連絡先でお受けいたしております。 https://www.facebook.com/balkanrisk/
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crnaoluja

Author:crnaoluja
こんにちは。
東欧地域の戦略環境分析が専門のシンクタンクで研究員をしておりますチェコ出身のエリシュカ・マジャーコヴァーと申します。

ネクロマンサーのすぴか、その一味のミルチャ・アントネスクとともに東欧情勢について御説明していきたいと思います。

ハンガリー以北(V4)+バルト三国は私、南東欧がミルチャ、地政学・戦略論など理論面はすぴかが担当致します。

文責は @crnaoluja (twitter)

ミルチャのアイコン絵はあんねこ先生より頂きました。
http://a-n-neko.tumblr.com/

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