スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セルビア・ボスニア・クロアチア関係、過去をめぐっての揺らぎ

sabun1.jpg

Dobry vecer!

エリシュカです。


前のエントリでお伝えした英国のスレブレニツァの虐殺の安保理でのジェノサイド認定決議案は、予想通りロシアによる拒否権行使により否決されました。

西側とロシアが新冷戦状態に突入しており、セルビアが親露国でロシアもセルビアを取り込もうと動いている状況下でのこの提案(スレブレニツァのジェノサイド認定は旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)においてすでになされています)はロシアの拒否権をくらうことは明白であり、何かしら別の意図があったのではないかと思いたくなります。

例えば私がTwitterでフォローしている限りの西側のリベラリスト達はこの件でセルビアのみならずロシアも非難しており、ロシアの西側におけるイメージがさらに悪化したことは確実でしょう。


ちなみにセルビア人側は、この件に対抗する形で、セルビア人に対するボシュニャク人による「スレブレニツァ・ブラトゥーナッツの虐殺」の慰霊碑を建立、追悼式を行いました。
http://inserbia.info/today/2015/07/bih-day-of-remembrance-for-serb-victims-in-bratunac-and-srebrenica/

この件については議論があり、少なくとも国際社会はこの「虐殺」の存在について否定的です。

しかしこれはボスニア内戦を取材したミーシャ・グレニーの「ユーゴスラヴィアの崩壊」307ページで報じられており、私はずっとこの虐殺は存在するものだと思っていました。


バルカン人には、自分たちが過去に「何をしたか」よりも「何をされたか」を優先するという性格があります。被害者意識が極端に強いのです。

この英国提案決議案についての議論が起こりかけていたころ、スルプスカ共和国では第二次大戦中の「コザラの戦い」追悼式が行われスルプスカ共和国大統領ドディクも出席しました。

当時、この周辺で活動していた共産パルチザンが枢軸軍によりコザラ山脈に包囲され、地元のセルビア人住民とともに約1万人が捕虜となりクロアチア独立国を牛耳っていたウスタシャのヤセノヴァツ絶滅収容所で殺害されました。

ちなみに90年代のボスニア内戦時におけるセルビア人によるボシュニャク人に対する「プリィエドルの虐殺」はこの報復の意味があったとされます。

しかしセルビア人により響くのは先のコザラの虐殺で、こうしたバルカン人の強烈な被害者意識はバルカン安定に関わる者は必ずわきまえておかなければならないものです。


ボシュニャク人によるスレブレニツァ虐殺追悼式典のほうにはセルビアもヴチッチ首相を派遣しました。

しかし、投石で出迎えを受けたことは、日本でも報道されましたのでご存知の方も多いと思われます。

ただ、救いがあるのは今のセルビアのニコリッチ政権がボスニアの不安定化を望まないことです。

ヴチッチ首相はスルプスカ共和国の住民投票の動きについて懸念を表明しています。
http://www.b92.net/eng/news/politics.php?yyyy=2015&mm=07&dd=17&nav_id=94802

さらに、7月22日にボスニアの大統領評議会の三人がセルビアを訪れ、無難な関係をアピールしました。
https://twitter.com/SerbianPM/status/623874070162112512

ボスニアはクロアチア人・ボシュニャク人によるボスニア連邦とセルビア人によるスルプスカ共和国の二つにより構成されていますが、その三民族から一人ずつこの二つの自治体の長以外の人物が大統領評議会のメンバーとして選出され、八か月交代で一人ずつ国家元首の座につきます。

写真はボシュニャク人代表の、ボスニア初代大統領アリヤの息子のバキル・イゼトベゴヴィッチとセルビアのヴチッチ首相がチェスに興じているところです。
https://twitter.com/MrNeny/status/623877758142271489


しかし、この地域に影響を及ぼしかねないイベントがまだ一つあります。

8月4日から5日にかけてクロアチアが予定している、クロアチア内戦を事実上終結させたオルーヤ(嵐)作戦の記念パレードです。

セルビアはこれに反発し、クロアチアがNATO加盟国など各国に参加要請をしていることに関して、海外要人のこのパレードへの参加はセルビアへの侮辱だという声明を発しています。
http://inserbia.info/today/2015/07/vucic-foreign-officials-attending-parade-in-zagreb-as-insult-to-serbia/

こうした地域からの難民で構成されるセルビアの難民組織の代表は、欧州議会議長にこのパレードの中止を求める決議を支持するよう要請しています。
http://inserbia.info/today/2015/07/linta-urges-schulz-to-support-resolution-on-croatian-military-operation-storm/

以前にも書いたようにこのオルーヤ作戦ではクロアチア政府軍によるセルビア人への残虐行為が発生し、その責任と問われこの作戦を指揮したアンテ・ゴトヴィナ将軍はハーグに収監されたものの、無罪放免となって帰国しセルビアの憤激を買いました。

ただでさえ悪化しているセルビア・クロアチア関係をさらに悪化させる可能性のあるこの件は、ボスニアの安定にも影響を及ぼすおそれがあります。


今日はこんなところでしょうか。

それでは、Na shledanou!

---------------------------------------------------------
管理人への執筆依頼などはこちらの連絡先でお受けいたしております。 http://seeuro.com/?page_id=10
スポンサーサイト
プロフィール

crnaoluja

Author:crnaoluja
こんにちは。
東欧地域の戦略環境分析が専門のシンクタンクで研究員をしておりますチェコ出身のエリシュカ・マジャーコヴァーと申します。

ネクロマンサーのすぴか、その一味のミルチャ・アントネスクとともに東欧情勢について御説明していきたいと思います。

ハンガリー以北(V4)+バルト三国は私、南東欧がミルチャ、地政学・戦略論など理論面はすぴかが担当致します。

文責は @crnaoluja (twitter)

ミルチャのアイコン絵はあんねこ先生より頂きました。
http://a-n-neko.tumblr.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。