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セルビアをめぐる東西の綱引きとスレブレニツァジェノサイド認定

sabun1.jpg

Dobry vecer!

エリシュカです。


前のエントリで西側はバルカンの固めをおろそかにしている印象と書きましたが、少なくとも米国は意識しだしているようです。

6月2日米国のバイデン副大統領の招きで米国を訪問したセルビアのヴチッチ首相は米国によりかなりポジティヴな態度を示されたようです。

これに先立ちヴチッチはセルビアの資源依存はロシアに限ったものになってはならないと発言しており、おおまかな流れはすでに大筋がついていた模様です。

http://bigstory.ap.org/article/85838d51a1e142099dc1c14a4e6184f2/premier-serbia-ready-reduce-dependency-russian-gas

訪問先の米国でもヴチッチは同様の発言をし、

http://inserbia.info/today/2015/06/drifting-away-from-russia-vucic-says-gas-supply-sources-must-be-diversified/

またEU加盟などについて米国からのサポートが得られるとも発言しています。

http://www.b92.net/eng/news/politics.php?yyyy=2015&mm=06&dd=04&nav_id=94328

またマケイン上院議員とも会談し、マケイン氏のセルビア訪問についても論じられた模様です。

http://inserbia.info/today/2015/06/mccain-serbia-deserves-to-be-strongly-supported-by-the-united-states/

ただセルビアはNATOには加盟しないことを再確認する、またセルビアは東西の仲介者としてのスタンスであることを強調するなど過度に米国寄りにはならない姿勢もまた示しています。


これに対抗してなのか(対抗してなのでしょうが)ロシア外務省はクロアチアにおいてセルビア人が迫害されているという文書を作成しました。

http://inserbia.info/today/2015/06/moscow-serbs-in-croatia-forced-to-change-their-religion/

http://www.b92.net/eng/news/region.php?yyyy=2015&mm=06&dd=08&nav_id=94366

セルビア・クロアチア関係が十分に悪化している現在、これについてのクロアチア政府の対応いかんによってはセルビアからのネガティヴな反応が出ることも予想され、90年代初頭から今に至るバルカン情勢を鑑みればロシアは危険なカードを切ったなという印象です。


しかし、ここにきて、意外なところからそうした関係をさらに悪化しかねない要因が飛び出してきました。

ボスニアの英国大使が、今年がスレブレニツァ虐殺20周年であることから国連安全保障理事会でそれをジェノサイド認定すための草案を作成中だと発言しました。

http://inserbia.info/today/2015/06/britain-drafting-un-resolution-on-srebrenica-genocide/

これについてセルビア、そしてボスニアのスルプスカ共和国は反発しています。

http://www.balkaninsight.com/en/article/uk-resolution-on-srebrenica-slammed-by-serbs

この英国大使の言によればスレブレニツァの虐殺をボスニア内戦で殺害された三民族すべての犠牲者の象徴とする考えのようですが、

これがいかに危険なことであるか、ボスニア内戦について知識がある人なら理解できると思います。

あの内戦は三つ巴であり(当初ボシュニャク人とクロアチア人は共同でセルビア人に当たっていたがじきに戦闘を開始し、西側による強い圧力により再び連合を結成)、どの民族も他の二つから被害を受けた記憶があります。

特に被害者意識が強く自分たちの受けた被害を優先的に覚えているバルカン人なら尚更です。

この件により、

・セルビアとボスニアのボスニア連邦(ボシュニャク人、クロアチア人)との関係

・スルプスカ共和国(セルビア人)とボスニア連邦との関係

だけでなく、

ボスニア連邦内のボシュニャク人とクロアチア人との関係も悪化させ、その結果

クロアチアとセルビアとの関係、さらにセルビアのサンジャク地方のボシュニャク人とセルビア政府との関係が悪化する可能性があります。


そしてこれはロシア側にセルビアをさらに追いやる可能性があります。

セルビアの新聞ダナスはロシアに援助を求める可能性について論じています。

http://inserbia.info/today/2015/06/russia-to-cast-veto-on-srebrenica-resolution-if-serbia-requests-it/


コソヴォの状況はあいかわらず、マケドニア情勢が混迷しているなどバルカンで不安定要因はあいかわらず存在する中、こうした新たな火種を作ることは、それがどんな意図からなのかを問わず、全くバルカンを理解していないで弄ろうとする愚考の最たる者でしょう。


ボスニアでは民族間の敵対意識はまだ消えていない状況です。

前のエントリでボスニアのズヴォルニクでの警察署襲撃について触れると書きましたので、概要だけ述べてみたいと思います。

4月27日、ボスニアのスルプスカ共和国の町ズヴォルニクの警察署が襲撃され、警察官のドラガン・ジューリッチが死亡し他の警官数人も負傷するという事件がありました。

犯人はイスラム過激派であり当局の捜査により実際にそうした人物たちが逮捕されましたが、この件の背景には民族間の憎悪があることが指摘されています。

主犯格のネルディン・イブリッチの父は、ボスニア内戦時ズヴォルニク近辺で行われたセルビア人勢力による虐殺により死亡しています。

そして死亡したセルビア人のドラガン・ジューリッチはセルビア人によるスレブレニツァの虐殺当時スレブレニツァを含む行政区管内で任務にあたっていたことが2004年のスルプスカ共和国により作成された文書により公表されています。

そのリストは単にその管内で任務についていたことを述べただけであり、虐殺に関わっていたことを示すものではありませんが、それをどう受け止めるかは受け手次第です。

ちなみにジューリッチの父も内戦時にボシュニャク人により虐殺されています。

そして、さらなる不安定要因がイスラム過激思想の流入です。

これは民族間の憎悪の歴史に比べればはるかに歴史が浅い最近の要素なのですが、民族間の対立に悪影響を及ぼすのは必至でしょう。

この件で逮捕された過激派たちは中東帰りであることも指摘されています。

また、この件でスルプスカ共和国のドディク大統領はスルプスカ共和国が独自の警察機構を持つ可能性について言及しています。



今日はこんなところでしょうか。

それでは、Na shledanou!

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管理人への執筆依頼などはこちらの連絡先でお受けいたしております。 http://seeuro.com/?page_id=10



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プロフィール

crnaoluja

Author:crnaoluja
こんにちは。
東欧地域の戦略環境分析が専門のシンクタンクで研究員をしておりますチェコ出身のエリシュカ・マジャーコヴァーと申します。

ネクロマンサーのすぴか、その一味のミルチャ・アントネスクとともに東欧情勢について御説明していきたいと思います。

ハンガリー以北(V4)+バルト三国は私、南東欧がミルチャ、地政学・戦略論など理論面はすぴかが担当致します。

文責は @crnaoluja (twitter)

ミルチャのアイコン絵はあんねこ先生より頂きました。
http://a-n-neko.tumblr.com/

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